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    • 2017.12.30 Saturday
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    名古屋久遠寺ライブブログ予定

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      タイトル: ドイツ・カッティングスタジオ・ルポ

       京都を拠点とするレコードショップ「JET SET」の協力のもと、2015年4月に発売したアルバム「ゴマサバと夕顔と空心菜」が、このたびアナログレコードとして再発売(2016.7.29発売。発売日が何度も遅れてしまって、すみませんでした)。僕のキャリアの中では初めてのアナログ盤リリース!

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       カッティングはドイツのフランクフルトにある「SCHALLPLATTEN SCHNEID TECHNIK」というスタジオで行われるとのことで、レコード制作の現場を間近で見てみたかった僕は、今年の3月、急遽ドイツまで見学に行くことにした。なかなかカッティングの依頼だけで現地まで行く人はいないので、向こうの方もさぞかし驚いたのでは。しかも予備知識さえ乏しい状況だったので、まったくのゼロから教えていただくことに。

       ここからお届けするのは、アナログ盤特典としてインナージャケットに書いた「ドイツ カッティングスタジオ・ルポ」には掲載しきれなかった、カッティングエンジニアのダニエル・クリーガーさんとの会話を中心にした「ルポ その2」。かなり専門的な記述も多いけれど、なかなか前例のないこの機会を味わうだけでもいいので、ぜひご一読を!

      翻訳&通訳:蓮ますみ(英語Ver.はこちら

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      ---SCHALLPLATTEN SCHNEID TECHNIK(以下:SSTスタジオ)の代表取締役であり、カッティングエンジニアのダニエル・クリーガーさんの名刺の裏にはなんと日本語表記が。日本のクライアントがたくさんいるということですか?

      「比率としてはそれほどたくさんではないのですが、これから実際に製作する、レコードの元となる『ラッカー盤』の原材料を日本の会社から輸入しているので、ビジネス面での重要度が高くなっています。その会社はMDCと言って、東京にオフィスがあり、工場は(標高の高い)高原にあります。原材料づくりには、きれいな空気が大切です。だからこそ彼らの製品はとても品質が良いんです。以前一度だけ日本を訪れたことがありますが、とても美しいところですね。」

      ---レコードは一時期CDに押され気味でしたけど、また需要が伸び始めましたね。

      「そうですね。1998年から2008年くらいまでのあいだは、ダンスもの、いわゆるテクノのレコードしかカットしていませんでしたが、近頃はそういったエレクトリック系の音楽の割合は減ってきて、ポップス、ロック、ジャズ、クラシックなど、様々なジャンルの音楽が再び増えてきました。ちなみにちょうど今作業していたのはトルコのトラディショナルな音楽で、おそらくだいぶ前に録音されたものかと。」

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      ---このコンソールはレコードカッティング専用に作られたものですか?

      「そうです。通常のコンソールは、レベルやイコライジング、ダイナミクスを調整するセクションを含めた、ステレオの音の信号が通過する回路がひとつだけですが、カッティング・コンソールにはこの回路が並行して2つあります。ひとつめの信号はカッティングマシーンにどんな音源が届くのかあらかじめ知らせるために。そしてもうひとつは、『ラッカー盤』にカットするためのもので、その信号はカッティングヘッドへ届きます。私はここですべての調整を、2つの音の信号に対して行わなければならないのですが、あとでさらに詳しく説明します。」

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      ---(スペクトルアナライザーを差して)これは何のために使うものですか?

      「周波数の帯域を目でチェックするためのものです。基本的にはどんな音でもレコードにすることができるんですが、強すぎる音に対して、ある程度の制限があります。(ヴォーカルのSやTの発音に代表される)歯擦音、(HやFなどの)摩擦音、ドラムのハイハット、クラッシュ、シンバルなどの高音域が強すぎると問題が起きます。レコードを再生したときに、その部分に歪みが出たり、バリバリというノイズが鳴ったりします。
       それを避けるために、レコーディングされた音源がカッティングに適しているかどうかを、常に判断します。特に高音域に気を配るんですが、極端な例では、マスタリングスタジオにマスターを返さなければなりません。処理を大胆に行った場合、全体的なサウンドイメージに影響を及ぼしてしまうことになり、クリエイティブな部分に触れてしまうからです。私はいつも美的な評価や修正をすることではなく、技術的な評価に重点を置いています。」

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      ---これからカッティングしてもらうのは、普通のレコードよりもひとまわり大きなサイズですね。今まで一度も見たことがないです。これは、レコードではないんですか?

      「ここではまず14インチの『ラッカー盤』を制作します。ラッカー盤は片面だけしか使用できません。反対側はプレス工場でダメージを受けてしまうんです。カッティングが終わったら工場に送る前に、レコードの中央部分に手で識別用の刻印を施します。通常はカタログ番号かマトリックス番号、またはレファレンス番号、稀に追加のメッセージ、このスタジオ名であるSST、最後にカッティングエンジニアの印として私の場合はラストネームのKRを。」

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      ---A面、B面にそれぞれ、世界でただ一枚のラッカー盤ができるんですね。

      「その通り! このラッカー盤をプレス工場に送り、それを元にして彼らがスタンパーという型を作り、そのスタンパーからレコードが生産されるのです。では、これからあらためてカットしていきますので、この機会にカッティングの準備と手順をお見せします。」

      ---ぜひ、お願いします!

      「このノイズが聴こえますか? これはバキュームの音です。何もしなければラッカー盤はターンテーブルの上に置かれるだけですが、このバキュームを作動させると取り外すことができなくなります。ターンテーブルに吸着されるのです。」

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      ---固定するために、ですか?

      「そう、滑ってしまわないように、そしてターンテーブルと完全に水平にセットされるように。さらに吸引管があるんですが、レコードの音溝(グルーブ)が削られた際に出る材料の『かす』を取り除いてくれます。音溝はこの鋭い(サファイアかルビーで出来た)針で削られますが、吸い取らないとすぐに溜まってしまうんです」

      ---ミクロな世界だと思いますが、このコンソールとカッティングマシーンを使って、これらの溝をどんな風に削っていくんですか?

      「モジュレーション(音溝の『うねり』)の振幅は、レコーディングの音により決定されます。レコードは回転しながら外側から内側へ向けて、スパイラル状にカットされていくのですが、音量が大きいほどその動きは激しくなるので、大きな音量の音は、より多くのスペースを必要とします。そんなときは、直前にカットされた隣り合う音溝に重なってしまわないように、音溝どうしのあいだの幅はより大きくなります。逆に、静かな音楽や無音の場合は多くのスペースを必要としないので、小さな幅でカットされます。
       要するに、一回転前にカットされた音溝の幅と、今現在カットしている音溝の幅をあらかじめ知っていなくてはなりません。聴いてみてください。音楽のカッティング用の音なんですが、少し遅れているでしょう。ちょうどレコードの半回転分の時間、ズレています。これが音溝の幅を計算するために必要な時間なのです。このタイムラグがあることで、実際にカットする前に次は一体どのような音楽が来るのかをコンピュータが認識し、同時に音溝と音溝のあいだにどれくらいの幅が必要になるかを計算するのです。」

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      ---ただ単純に溝を削っていくだけじゃないんですね。他にも気を付けなければいけないところは、どんなところでしょう。

      「たとえば、こちらのB面の時間は25分ですが、どれくらいの音量で、またはどれくらいの強度でこの曲をカッティングできるか、事前に推定しました。なぜならカッティングする音量が、どれくらいスペースを消費するかを決定するからです。レコード片面のスペースには限りがありますので、そのスペースを有効に活用するために最適な設定を見つけ出す必要があります。使用可能なスペースの範囲に収められるような設定にしないと、最後の曲がレコードに収録できなくなってしまったりします。また、最終的にレコードのスペースの半分しか使われていないような状況も、避けなければなりません。たとえ全てのスペースが使われていなくても、技術的には大きな問題ではないのですが、見た目が良くありません。リスナーはレコードにほぼ完璧な溝が彫られていることを、期待していますからね。」

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      ---たしかに。最初から最後まで音溝が刻まれていて当然だと思っていましたが、トータルタイムはレコードによってまちまちですもんね。なるほど〜。

      「このように、音溝の深さと幅をあらかじめ設定しないといけないんですが、無音部分や基本の音溝の幅をあらかじめ機械で設定できます。この25分というマスターは、レコードの片面にとってはかなり長いので、最小に設定します。」

      ---反対に、時間が短すぎるレコードもありますか?

      「例えば片面10分とか、マスター音源が短い場合は、とても大きな音量でカットすることができるので、音溝のうねりの寸法が大きくなるようにセッティングします。スペースがたくさんあるので、余裕を持って可能な限りの面積を使うことができます。逆に、余裕を持たせすぎてマスターがスペースからはみ出ないように、注意して細かく調節しなくてはなりませんが。」

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      ---低域と高域で溝の深さや幅に違いはありますか?

      「マイクロスコープ(顕微鏡)を覗いてみてください。ベースのような低域の周波数は長いカーブを描き、よりゆっくりとした動き(振動数が少ない)の音溝であることが分かります。この、細かく刻まれているのがハイハット、ゆったりしたうねりをともなっているのがバスドラムです。短いうねりは高域周波数を、長いうねりは低域周波数を表しています。このようにどんなグルーブでも組み合わせることができるのです。」

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      ---まさに音が絵になっています!

      「基本的にモジュレーション(音溝の『うねり』)は、垂直方向(浅く⇆深く)の動きではなく、水平方向への動きなので、音溝の深さは一定になります。つまり、カーブは上下方向ではなく、主に左右に動きます。もし左右のチャンネルに対して、音量やフェーズ(位相)に差がある場合には、これに『深さ』のモジュレーションが加えられます。例えばもしヴォーカルが常に中央に定位して(=置かれて)いる場合は、モジュレーションは左右だけということになります。」

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      ---そうだったんですね。水平方向の動きだけで音楽を再現できるということも凄いですが、溝の深さの方は『ステレオ効果』に秘められているんでしょうか。

      「はい。深さのモジュレーションは、左右のチャンネルの音に差がある場合に加わります。ベースとヴォーカルが真ん中に定位していて、ギターが左側だけに定位している場合、基本の音は水平方向だけのモジュレーションとなり、ギターはそれに垂直のモジュレーションを加えます。これはステレオの作用を最大限引き出すために、必要なこと。レコード針は、水平方向と垂直方向のモジュレーションがどのように組み合わさっているかを通して、こちらが左のチャンネル、こちらが右のチャンネルということを感知するのです。」

      ---ところで、いままで数多くのカッティングをこなしてきたダニエルさん。クライアントは世界中にいるんですか?

      「ドイツ国内は20%くらいで、フランスやアメリカが多く、時々イギリスからの需要もあります。でもイギリスには、かなり多くのカッティングスタジオがありますね。ドイツには10ヶ所ほどのカッティングスタジオがありますが、イギリスはもっと多いです。」

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      ---ダニエルさんも楽器を演奏されたりするんですか?

      「趣味でベースを弾いているんですよ。12、3才のころに始めたんですが、プロのミュージシャンになろうと思ったことはありません。バンド仲間とたまに街で演奏をしています。いくつかのパンクロックバンドから始まって、エクスペリメンタルなものやジャズ、そのあとはポップロックに移行しました。だけど最近また、うるさめなロックをやりたいなぁと思っていて、メンバーを探しているところなんです。」

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      ---このメモはなんですか?

      「これは各レコードのカッティング時に適用した設定や手順を、記録したものです。たとえばJSLP-68、つまりHARCOさんのラッカー盤をもう一度カッティングしたいときは、これらのノートを参照すれば、全く同じ設定&調整で再現できるんです。私たちはこれらのノートを1971年からずっと付け続けています。」

      ---うわぁ。いつでも再現できるということは、どんなレコードでも当時のままの音でリイシューできてしまうんですね。

      「ところで、HARCOさんのアルバムの5曲目のインストゥルメンタルなんですが、不思議なエフェクトがありますね。ミックスによるものなんじゃないかと思いますが、21〜22kHzあたりにとても強い音があって邪魔をしています。ローパスフィルター(設定したある周波数よりも低い信号だけが聴こえるようにする装置)をかけて、その部分を少々削減しなければいけません。このままだとカッティングヘッドを痛めることになり、最終的にターンテーブルで再生したときにも不快なノイズが出てしまいます。」

      ---わかりました。音像は多少変化してしまうけれど、アナログ化のためには避けられないプロセスであれば、よろしくお願いします。A面とB面にセパレートさせるとき、6曲目をB面の1曲目に設定したのですが、そのあたりはどうですか?

      「B面はA面よりも1曲多くなり、結果的に5分長いので、モジュレーションの強度の設定を下げる必要があります。そして40Hz以下の周波数信号は多くのスペースを消費するので、(さきほどとは逆の)ハイパスフィルターを使って軽減しました。それによって、スペースを節約することができます。」

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      ---なるほど、わかりました。ありがとうございます。まとめとして、レコードが出来上がるまでの流れを、簡単に説明していただけますか。

      「はい。今、私たちが作成したこの『ラッカー盤』は、柔らかすぎるので何もプレスすることができないのは、知っていますよね。もしこれをスタンパーとしてプレスしていくと、音溝が凸型になってしまい、ターンテーブル上では再生できません。このラッカー盤の上にニッケルでメッキをして、音溝が刻まれたものを『マスタースタンパー』といいます。このマスタースタンパーから再度インプリントを繰り返したものが『マザースタンパー』と呼ばれ、再び音溝が凹型になるので、レコードと同じように再生できます。さらにそこから複製を作れば、大量プレスに最適な『スタンパー』が完成します。」

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      ---長い長い工程ですね、、、。

      「最後に、少しWebを見ながら解説しましょうか。これはドイツのプレス工場なんですが、プレスマシーンがありますね。これらのマシーンは他のプレス工場、例えば日本の東洋化成さんのものとよく似ています。カッティングマシーンもそうなんですが、だいぶ以前に最後のマシーンが生産されて以来、ほとんど新しい開発や生産がなされていません。だから現存するマシーンは希少で、この頃はいつも忙しく働いていますよ。このプレスマシーンの一方にA面のスタンパーを取り付け、もう一方にB面のスタンパーを取り付けます。その中間に、温められた柔らかいプラスティック(塩化ビニール)の塊を置いて、両側からプレスして、レコードが完成します!」

      ---おお〜。今回のアナログ製作はカッティングからプレスまで、ここドイツですべてお願いしています。全工程を終えて日本に届くのを、楽しみにしています!

      *「ゴマサバと夕顔と空心菜」のB面カッティングの立ち上げを、なんと僕が体験させてもらい、動画におさめたので、ここに公開! なかなかサマになってるでしょ。

      (後日YouTubeにアップした動画をここに貼る)

       今回のスタジオ訪問にあたって、現地での通訳やブログに向けての原稿翻訳を担当してくれたのは、フランクフルト在住の蓮ますみさん。ご自身でもエレクトリックミュージックの音楽制作経験が豊富で、このスタジオ訪問を僕と同じように楽しんでくれた。このたびは、本当にお世話になりました!

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      「音とかたち」陶芸家・吉田次朗とのコラボ展

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         たびたびこのブログにも登場してきた陶芸家・吉田次朗くんと、全国5カ所で展覧会を行います。詳しくはこちらの特設ページにて。各会場はライブも行います。ライブの詳細はこちら

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         彼との出会いは、画家の奥まゆみさんとの展覧会「ワイルドピクニック」で僕がで代官山Gallery it'sにてライブをした際に、それを見に来てくれたこと。有り難い事に、僕のCDをよく聴いていてくれたらしい。

         次朗くんは岐阜・多治見で修行を積み、その後瀬戸内海の大津島に移り住み、廃校になった小学校の広々とした図工室などで制作を続けていました。島のイベントでは僕のことも呼んでくれ、楽しいときを過ごしたのはまだ記憶に新しいです。

         今は島を離れ、山口県内のアトリエで制作しています。今回のスケジュールには彼のアトリエも入っているので、お近くの方は僕のライブにでも遊びに来がてら、ぜひ訪れてほしいです。

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         今回の展覧会も、奥まゆみさんのときと同様、彼の作品から感じたものを音楽で呼応するという形態をとっています。会場では、次朗くんが初めて挑戦した動画に合わせて作った僕のピアノ小曲(small picies)が流れています。それ以外にCDを販売する予定で、そこには同じようなピアノ小曲が9曲と、未発表のピアノ弾き語りを3曲収録。

         ジャケットはおなじみのdrop aroundに、紙の梱包を作ってもらいました。中には次朗くんのオブジェを使ったポストカード入り。2300円。

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         今回の展覧会は会場がどこもスローな雰囲気で素晴らしいところばかり。猛暑日が続くこの夏、涼しい風を心に吹かせにきてほしいです。

        きこえる・シンポジム 2010夏 in高尾山 レポート

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           去る7/10、今夏の「きこえる・シンポジウム」は、ガイドの坂田昌子さん(虔十の会)とまわる高尾山エコハイク。申し込んでくれた皆さん24名、スタッフを含めると30名余りで午前10時に出発!

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           連日の梅雨空だったのが、この日はびっくりするくらいに回復して晴天。坂田さんが当初「雨上がりがいちばん気持ちいい」と言っていたのを思い出す。天然のミストの涼しさや、湿った土の香りがたまらない。

           高尾山は、1300種にも及ぶ植生が豊富な山。その数はなんとイギリス一国ぶんに相当するという。それらの植物を求めて集まってくる虫はさらに5000種。東京都にありながら、日本でいちばん生物多様性の豊かな山と言われている。

           6号路を選んで登山をし始めると、高い木の幹や岩に苔がびっしりと張り付いているのが目につく。個人的には、昨年夏に行った屋久島がすぐよぎった。高尾山にも何度か登っているけれど、全然気がつかなかったな。よく観察してみれば南の島に少しも劣らない環境に驚く。

           海で言えば、潮目の混合水域。街で言えばニューヨーク。隣り合う木々の種類が違うのだ。林試(林業試験場)の森のような雰囲気もある。

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           苔むした岩の上をアメンボのような細長い足のザトウムシが横切っていく。それを黙って見守るのはカタツムリ。苔の説明をしてくれる坂田さん。

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           ときおり立ち止まっては、みんなを集めて解説してくれる。

           「高尾山は地面が隆起してできた山なので、地層が地面と平行ではなく、縦になっていたりしているのが、岩の模様を見ると分かる。その縦の断層に沿って、『水の道』がたくさん出来ていて、高尾山は水の宝庫」

          「地下水は15年前の雨、それが山のなかをくぐって、植物たちに水を与える」

          「キノコは森の掃除屋さん、年老いた木から養分を吸い取って土に返す」

          「夜は猫が座布団を掴んだようなムササビが飛んでくる、モモンガは似てるけど少し小さい(あの巣からムササビが顔だけ出して寝てた)」

          「たくさん生えているシャガという大きな草は根っこが浅く、緑のネットを張って水を浄化している」

          「ウグイスは毎年、鳴き声を忘れる、だけど、、、」などなど。

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           川の傍で両耳に手をこんな風に、後ろに向かって広げて当てると、川の音や木のざわめきが何倍にも大きく聞こえる。森は想像以上にいろんな音を立てている。

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           13時半に頂上でみんなでお弁当。そして後半は、地元の人しかほぼ知らないマニアックな裏高尾へ。行きと違い、空いている道をみんなでゆっくりと下山。下りはバネのようにして歩けば膝に負担がないよ〜、とのこと。ちなみに登りで疲れてきたら、上げた足と反対の骨盤を開くようにすると楽。

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           17時近くにツリーハウスに到着! これは日本のツリーハウス作家ではいちばん有名な小林崇さんのアドバイスのもと、坂田さんやそのまわりの人たちが1年がかりで作ったとのこと。渡良瀬エコビレッジに行った時も小林さんの作品があったなぁ。あの「祝島」のびわ茶とおからドーナツで休憩して、生音ライブ。

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           道中、坂田さんが何度も教えてくれたのは、圏央道のトンネル工事のこと。横浜方面から徐々に掘られてはいるが、大量の地下水をミルクセメントで止めながら進むという、海底トンネルと同じ工法で工事は進められ、そのせいで1m2〜7000万円ものお金かかっているとのこと(総額5兆円とも)。そのせいでこの日6号路で横切った「びわ滝」の水も枯れるのでは、と言われている。

           政権交代の際に取り沙汰された八ツ場ダムのように、一転して中止になる可能性もあるし、迂回する代替案もある。でもそれには、地元の人や、署名したり反対運動をするひとりひとりの行動にもかかっている。興味がある人は、虔十の会のホームページを見てみてください。

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           最後には今年の秋、名古屋で行われる生物多様性COP10の話にもなった。7分に1つずつ消えて行く絶滅種。生物多様性の定義の3つ目にもあるように、ある種が生き残るためにある種を根絶やしにしてもいいという法則は原則的にありえない。それは同じ種別でも同じだ。この山のバッタがいなくなっても、ほかの山にバッタがいるから大丈夫、ということは言えないのだ。東京の人口だけいなくなってもほかにも人間がうじゃうじゃいるから大丈夫、なんてこともないように。
           今では「アバター」をはじめ、そういったテーマを秘めた映画も数多くあるが、昨日たまたまジブリの新作「借りぐらしのアリエッティ」を見た。この高尾山ハイクの続きを見たような気がして、何度もドキリとさせられたのだ。

           *みなさんも生物多様性「じぶん条約」を宣言してみましょう。詳しくはこちらをクリック。

          暗闇カフェ@国分寺カフェスロー

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             先月、国分寺カフェスローでの定期イベント「暗闇カフェ」にHARQUAとして参加しました。ここは「100万人のキャンドルナイト」発祥の地。2001年、当時のブッシュ政権の大胆な原発推進に対して行われた、カナダの「自主停電運動」を目の当たりにした文化人類学者の辻信一さんが、後にこの店で始めました。

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             暗闇だからどこにいるか分かりにくいけれど、写真ではQuinkaがギターを座って弾き、僕がアコーディオンを立って弾いています。全12曲、PAも照明も無しの、完全生音ライブ。歌は出来るかぎり大きな声で、でも気を張りすぎないように。僕らのシンポジウムでは、最後の数曲のみいつもこういうスタイルでやってきましたが、こんなにたくさん歌うのは初めて。

             お客さんにとっても、この空間は新鮮だったのではないでしょうか。そして演じている僕たちにとっても、とっても貴重で、どこか神秘的な体験でした。音楽家にとって、きっと何らかのセラピー効果があると思います。暗闇で聴覚が研ぎすまされたうえに、マイクもスピーカーもない丸腰の状態。歌っていると指先の毛細血管までピリピリと熱を感じて、とても気持ちがよかったです。

             こんな機会を与えてくれたカフェスローの皆さんに感謝します。東京以外でもこんな完全アンプラグドのライブを、出来ればたまに企画していきたいと思います。

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